ワークショップ①:仏教に学ぶマインドフルネス

         ―マインドフルネス訓練と体験としてのマインドフルネス―

 講師:影山 教俊 先生

日蓮宗勧学院嗣学

※実りの大きい研修のために、当日は、朝食抜き、もしくは果物やジュース類など、軽めの朝食程度でご参加ください。

マインドフルネスの歴史は、1979年にKabat-Zinnによって開発されたマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)が、マサチューセッツ大学医療施設で慢性の疼痛や疾患の治療に取り入れられたことからはじまる。MBSRは仏教やヨーガなどの東洋的な瞑想技術、とくに上座部仏教の伝統的な瞑想技術である「止観」、すなわち、集中と観察を臨機応変に応用する瞑想技術である。そして、この技術によって概念化されたマインドフルネスとは、サンスクリット語の「smṛti」、パーリ語の「sati」、漢訳の「念・憶念」の英訳で「気づき」のことであり、「ある特定の方法でものごとに注意を向けることである。すなわち、意図的に、今この瞬間に、価値判断することなしに、注意を向けることである。」と定義される(Kabat-Zinn、1994、P.4)。 そして、このような「マインドフルネス」を伝統仏教の伝承、すなわち、師範による体験的な技術指導と文献(経論釈)から眺めると、MBSRはマインドフルネス訓練(介入技法)とは止観双用の瞑想技術を実習することであり、その技法によって誘導される意識状態とは禅定体験(マインドフルネス、今この瞬間の気づき)のことだと分かる。さらに、この禅定体験は禅(dhyāna)という内観関係から、定(samādhi)へと統一される過程であり、その意識状態にはその技法の熟達度によって浅深の階梯が存在する。伝統的に仏教ではそれを「四禅」と呼び、粗雑な気づきから微細な気づきへの過程として表現される。当日は仏教瞑想の基本技術である調身・調息・調心の修行三事から、概念化されたマインドフルネスを体験として学びたい。