基調講演:中年クライシスを理解する~臨床心理学・心身健康科学的視点から

  演者:島田 凉子 先生

 人間総合科学大学大学院

 ユング派の心理療法家河合隼雄には『中年クライシス』(1993)という著書があります。思春期が様々な危険性を孕む時期であることは知られていますが、中年期にもまた、若い頃とは違った形の危機が訪れます。苦しみながらも上手くその人なりの「自己実現」の方向を見つけ出すことができたなら、実りの秋を楽しむこともできるようです。

 若者は、親の価値観や権威を一度は全否定して、自分自身の価値体系やアイデンティティを打ち立てなければなりません。中年期の入り口では、もう翔べなくなったことへの焦りや戸惑いから、中年期後期では、若者らよって否定されたり、人間関係の軋轢や破綻などに直面し、それまでの自信や信念が崩壊してしまうような体験をすることがあります。そんな苦しい時期を創造的に乗り切るために役立ちそうな心理学的見方や考え方を集めてみました。それらを通して人生についてご一緒に考えたいと思います。